季節は移り行くのに

ウクライナとロシアの戦いを見ていると、暗澹とした気持ちになってきます。戦争というものは、こうして簡単に始まり、終わるのは、かくも難しいのですね。

 

侵攻当初は住民の非難にたじろいで、ロシア軍が戦車を後退させる場面もありました。ウクライナに捕まった、まだ少年のような顔をしたロシア兵に、お婆さんが食べ物を与えている場面も見られました。ここまではまだ、双方に人間的なものが生きていたと思います。

けれど、意外に強かったウクライナの反撃で味方の多くが殺され、自分の命も脅かされるようになると、ロシア軍は、一般市民への攻撃も躊躇わなくなりました。

肉親や仲間の死を見ることが増えれば増えるほど、人は憎しみを増幅させ、残忍になる。ロシアは支配地域の住民を虐殺し、ウクライナにも、捕虜を殺害した疑惑があります。おそらく事実ではないでしょうか。中枢部から捕虜殺害の許可が出ていたとは思えませんが、今のウクライナ兵は正規の軍人だけでないことを思えば、どこかで、そういう復讐があっても不思議はありません。

 

停戦交渉は、暗礁に乗り上げたままです。ロシアがすべての戦線で負けているうちは、ロシアの面子が立たないので合意はできません。

ロシアが東部を完全に掌握すれば、ロシアの面子はいちおう立ちますが、領土の割譲を認められないウクライナは、合意できません。

結局、徹底抗戦になるでしょう。そうして、戦いは、より恐ろしい武器の使用へと進み、どちらかが完全に屈服するまで止まず、大量の死者を出す泥沼へとはまっていくのです。

 

これが、戦争というものなのですね。だから、始めてはいけないのですね。武力戦争を防ぐための、外交戦、情報戦、経済戦、そして、国際協調努力がいかに大切か、よく分かりました。

 

今は、ウクライナは、多国の援助で東部戦線に注力し、ロシアをより消耗させるしかないのかもしれません。

けれど、心情的には難しいでしょうが、追いつめられたロシアが核を持ち出す前に、あるいは、東部戦線が膠着した、どこかの時点で、ウクライナも支援国も、停戦に向けて積極的に動いてほしいと思います。

条件は、ウクライナの中立と、先にロシアが独立国と認めた地方の帰属を住民投票に任せる、あるいは自治区とすること。ロシアの占領状態にある地方については、今後、話し合うこと。・・・かと思います。

ロシアは勝利宣言をするでしょう。ウクライナはどんなにか腹立たしいでしょうが、どうか冷静に未来を見据えて、停戦の機会を逃さないでほしいと思います。ここを逃せば、大惨事に突入するかもしれません。ひとまず、武器を収めることが肝要です。

 

停戦しても、世界はロシアを許してはなりません。領土の強奪も認めてはいけません。あらゆる締めつけにより、早晩、ロシア国内には異変が起こるでしょう。いつか必ず、領土は戻ると思います。そうなるまで、民主主義国は、武器に依らない戦いを続けるのです。

甘い考えでしょうか。

 

3隣国とうまくいっていない日本にいる私は、けっして他人事ではないのに、難民への寄付以外には何もできず、歯がゆい思いです。

 

気がつけば、桜はもう、すっかり美しい緑に変わりました。自然は着々と、次の季節への準備を始めています。

ウクライナにも、早く普通の暮らしが戻りますように。