出版難民になって

実は、これまで絶大な支援をしてくださっていた出版社の編集長さんが、残念ながら、昨年の五月に亡くなられ、事業を閉じてしまわれました。びっくり

さて、どうしたらいいのか、緋野晴子は新作をどこから出版すればいいのか、この一年、出版難民となって、えーん あちら、こちら、漂流しておりました。

 

今回は400枚ほどの恋愛小説です。

心は文学、文章はだいぶん純文学的、でも、いわゆる純文学小説は敬遠されがちですので、多くの方に楽しんで読んでいただけるよう、舞台や展開をなるべく軽やかにして、エンターテイメント性を取り込みました。

文学界の大御所、加賀乙彦先生には、「純文学か、大衆文学か、どちらかしかないのですよ。その間というものは、ないんです」と言われましたが、私は、正直なところ、そうでもないのではないか、と感じています。それで、大先輩のお言葉に逆らうことにはなりましたが、新たな実験小説を試みることにしました。

 

まずは、タダ出版を狙って、文学賞への応募を考えてみました。ですが、

バリバリ純文学

ファンタジー

どっぷりエンタメ

ライトノベル

歴史小説

推理小説

以外の賞って、ほとんど無いんですね!! 目

まれに、これは? と思うと、その出版社で職業作家として継続的に執筆できる人(売れ筋の作品を書く人・若い人)という縛りがある。

緋野晴子の小説、どこにも当てはまらないんですよね。困ったなあ。ショボーン

 

振り返ってみると、緋野の作品を拾い上げ、より良い作品になるようアドバイスしてくれて、印刷製本代だけで出版してくださったリトルガリヴァー社の編集長、富樫庸さんは、ほんとうに有難い、貴重な存在でした。

ネットではいろいろ非難されていましたし、確かに、非難する方たちのお気持ちも分からないではありません。そういう面もありました。

でも、あの編集さんに出会っていなかったら、「沙羅と明日香の夏」と「青い鳥のロンド」は、日の目を見ていたかどうか? 『ちぎり文学奨励賞』をいただくという僥倖もなかったはずです。

 

あの方には、小説を愛する本物の心がありました。ただ出版して儲ければ良いではなく、より良い作品にするために、どこまでも著者に付き合ってくれました。「向いている方向が違う」と論争になったことも、今では楽しい思い出です。

また、無名の作家を育てたいというお気持ちもあって、

「一人で書いているだけでは駄目だ、緋野晴子の作品ここにありと誰が気づいてくれるのか、読んで批評してくれる人を得なさい」と、引きこもり体質の緋野を東京に引きずり出し、岳真也先生に引き合わせてくださったのも、あの方でした。お蔭で、今度の新作には、岳先生のアドバイスをいただけました。

小説は、なかなか売れない厳しい時代です。書き手も苦しいですが、出版社さんも苦しいのですよね。その中で、富樫さんは、なんとか佳い作品を世に出したいと頑張った、自前の作家を育て上げたいと頑張った、その夢に嘘はなかった、と緋野は信じています。

 

さて、その富樫さんを失い、出版難民となって彷徨った緋野が、最終的に行き着いたのは、やはり自費出版しかありませんでした。名のある出版社さんからの自費出版ではありません。

そういうところは、緋野にとっては、とんでもなく費用がお高いので、論外です。

今回は、書籍の制作と販売ルートに乗せることだけをお願いし、編集・校正などの作品内部に関することはすべて自分でする、自費・自力出版にしました。

(岳先生にアドバイスをいただいていますので、編集の半分くらいは、していただいたようなものですが・・・)

売り上げの50%を印税相当額としていただけるので、これまでの印税10%より有利です。

結果予想では、おそらく、リトル・ガリヴァー社さんからの出版と、費用的には大差なくなると思います。ニコニコ

 

と、いうわけで、ようやく、新作出版の運びとなりました。五月には発売される予定です。長らく滞っていた千里の道への一歩が、また踏み出せました。

擱筆してから、すでに三年近く、前作からは五年も経っていますので、感慨ひとしおです。

富樫さん、

緋野に夢を託してくださって、ありがとうございました。富樫さんが待ち望んでいた立派な作品が、間に合わなくてご免なさい。🙇

あなたが逝ってしまわれて、小説の道は、ますます茨の道ですが、緋野は頑張り続けます。

 

                                    たった一つの抱擁