新しい出会い

このところ、物書きの友が増えています。かつてのブログの友人「夢追い人」さんとの再会もあれば、新しい出会いもありました。「文藝軌道」という同人誌で10年ほど活動されてきた小説家の小田部尚文さんです。「プロポーズアゲイン」「ごじゃっぺ」など単行本も出版されています。(Amazonでご覧ください)

フェイスブックで知り合い、私の「時鳥たちの宴」にご感想をくださいました。

 

大変に優れた作品だと思います。中世の文学、平安時代の歌を巧みに用い乍ら、現代の若者たちの行動と心理をそこに当てはめていく。面白い試みだと思います。若い人たちの心理を巧みに描き出しています。これだけの作品は国文学を学んだ人にしか書けません。

通常、小説には主人公以外多数の登場者を入れると読者には分かりにくくなり、混乱をきたしますので、出来るだけ登場人物を絞ります。

この作品には浮橋教授以下男女約8名が登場し読み手には多少重荷になりますが

それが一人一人個性豊かに描かれており読者を飽きさせません。

特に浮橋ゼミの中での若者たちのやり取りは生き生と描かれており、読者をまるで

学生になった気分にさせてくれます。

 

P97の「法律のことは分からないけど・・・円満に暮らしていけるんじゃあないかしら」この部分は曖昧性を見事に語っています。そうですよね、曖昧とは人生の潤滑油なんですね。

 

P194の「三人はそれぞれ・・・・どれもけなげで、すこし哀しい」ここは名文です。この小説は全体的に美しい文章で溢れています。

 

女性作家が男性を描くと描かれる男たちは女性のように描かれてしまいます。

全体の印象は男性が女性のようで少々大人しい印象がしました。それは平安時代を現代風に描くという著者の意図なのかもしれませんが。

 

216Pから始まる浮橋教授とのやり取りが現実味があって面白い。

男のエゴが良く描かれています。ああいう場面では男は教授のような態度をとるのでしょうね。私も結婚相手ではない女性を妊娠させたら浮橋教授のような行動をするでしょう。男の読者はあそこを読んで「はっ!」とします。良く描かれています。余計なことですが、私には身に覚えはありません。

そんなことはどうでもよろしい!ですよね。

 

とまあ、勝手なことをずらずらとお書きしました。今後の更なるご健闘を

祈っています。大変面白い小説でした。

 

小田部さん、とてもご丁寧に読み込んでいただき、ありがとうございました。

男性の描き方など、いただいたお言葉を今後の創作に生かしていきたいと思います。

 

私も小田部さんの「ごじゃっぺ」を読ませていただき、痛快でしたので、少し、ご紹介します。

 

茨城弁丸出しで、見た目も冴えず、女性にもてない銀行員が、大活躍して支店を立て直し、ついに恋人を得るお話なんですが、その大活躍の描かれ方がすごい。Amazonの内容紹介欄にもありましたが、まさに快刀乱麻を断つ活躍です。

 

一方で、恋人と訪れる沖縄の小浜島のハイムルブシのところなどは、この上なくロマンチックに描かれていて素敵です。私もそこに行ってみたくなりました。

 

全体的に描写がお上手で、それぞれの場面にみな臨場感があり、目の前で見ているような気分にさせられます。こうした点は、脚本に近いものがあるように思いました。銀行の人事とか、融資関係の業務とか、一般預金者には見えない世界が描かれていることにも興味が引かれます。

 

ある文芸評論家さんは「茨城弁で毒沼を罵倒するシーンはユーモアに富んでおり雷太の真骨頂ともいうべき名シーンである」と述べられたそうですが、確かに、この終盤のヤクザとのやりとりは、快男児「ごじゃっぺ」の本領発揮です。筆が乗っていてリズムが良く、すっかり引き込まれてしまいました。とにかく胸のすく面白さでした。

 

興味を引かれた方は、ぜひAmazonでお買い求めください。茨城県をはじめ、全国の多くの図書館にも配架されているようです。

 

私の書く小説とはタイプがまったく異なりますが、創作上、考えさせられることは多々ありました。良き「書き友」を得られたことに感謝したいと思います。そして、驚いたことに、小田部さんは、私の「かがく塾」の師・岳真也先生と大学で同期だったそうです。人の縁とは不思議なものですね。