津軽の旅

「歳をとって、何かいいことがありますか?」と聞かれたことがあります。

私は、「もちろん、ありますとも」とお答えしました。

それは、いつでも旅ができること。しかも、現役時代より圧倒的にお安く、観光地もお宿も空いていて、その上、出会う人たちが、若い頃より優しく丁寧に接してくれるような気がします。これぞ加齢の功名というものでしょう。

と、いうわけで、せっせと格安旅を拾って出かける私であります。

この度は、津軽へ行ってまいりました。そう、津軽と言えば、太宰さんの故郷ですよね。でも、斜陽館には行きませんでした。昔の津軽の家の造りを見るのも悪くはないと思いましたが、少々遠かったですし、作家の住まいなんぞに行ってみても、さして面白いこともないですからね。

 

津軽は広いです。青森空港からレンタカーで中西部を走りましたが、3泊4日では、とても回りきれませんでした。

一日目は、まず、「鶴の舞橋」。津軽富士見湖に架かる全長300メートルの、日本一長いという木造三連太鼓橋です。横から見ると、羽を広げた鶴の姿にも似ていました。橋の向こうには、津軽富士と呼ばれる岩木山(いわきさん)が、雲の衣を纏って聳え立っています。この地の人々の信仰を集めてきた美しい山です。

 

     

 

     

 

次は、追良瀬川を遡った山奥に、ひっそりと立つ「見入山観音堂」。

観光地ではなく、あくまで信仰の地ということでしょうか、案内の看板もなくて、少し道に迷いました。

梵字を掲げた鳥居をくぐって、薄暗い山道を登っていったのですが、かなり急な道が長々と続き、体力不足の私は果たして行きつけるのか、もう無理かもと思うほど息が上がってしまいました。最後は、「辿りつけたならば、どうか・・・・」と心の中に願をかけながら登っていました。

 

     

 

そして、辿り着いたのが、このお堂です。崖の岩の中に、すっぽりと嵌るように建っています。どうやって、こんなところに建てることができたのでしょうか?

 

     

 

     

 

中には入れませんでしたが、もし入れたなら、一晩、ここで座禅してみたいものだと思いました。きっと怖くなってしまうでしょうけど・・・。

     

 

身体はすっかり疲れてしまいましたが、えも言われぬ満足感がありました。

 

津軽の海に溶けていく夕陽を眺めながら、五能線に沿って走り、その夜は不老不死温泉で疲れを癒しました。写真は翌朝の、誰もいない時に撮ったものです。