小説書きの卵さんたちに

「青い鳥のロンド」にレヴューをくださったブログの友人 池ちゃん から、こんどは小説執筆上のアドバイスをいただきました。 こつこつと孤独に小説を書いてみえる小説書きの卵の皆様にも、ご参考になるかもしれませんので、公開させていただきます。


こんにちは。僭越ながら気づいたことをお伝えします。

今回は特に女性向きな作品でした。それはセイラさんの個性ですから、さらに女性に特化させても良いのではないかと思います。
書き出しから光と風を感じ、とても良かったです。あと一つ欲しいのは「匂い」。

女性の脳は、地図を読んでも「○○ビルから○メートル」ではなく「クロワッサンの美味しいあの店の向い」であるとか、そういう"感覚"の情報が先に来ます。
嗅覚は思考回路を通さずに脳にダイレクトに来ますから印象に残りやすく、味覚・嗅覚から思い出も紡げますからね。
ですので食べ物の表現も、色や味以上に香り・匂いの表現によって、さらに女性に印象付けられると思うので、不本意かもしれませんが、嫌味にならない程度に最大限「匂い」も盛り込んでみてはいかがでしょう。
ストーリー以上に「食べ物」の印象付けは大事ですよ。

また、テーマはとても魅力的なのですが、読んでいて心に起伏が起こりませんでした。
それは、それぞれの「場」の書き出しも、主人公も会う友達のテンションも一定、つまり冷静なのです。ですので「場」が変わってもまた同じところが始まるような錯覚を覚えてしまいます。
「対比」の話を以前しましたが、友達一人一人の個性の設定をもっと大胆にしても良いのではないでしょうか。

○子は店に入ってくるなり「ねえ聞いてよ、失礼だと思わない? わたし頭に来ちゃった」と、言い終わるか終わらない内に大きな荷物を床にドンと置き、私の顔を覗き込んだ。隣のテーブルの学生が驚いた表情を見せたが彼女はお構いなし。○子はいつもこうなのだ。

例えばこうすると、主人公のテンションが一定であったとしても、前までの「場」の空気がパッと変わり、友達のせっかちな個性も瞬時に伝わります。
場が変わっても「いつも同じ感じ」という危険性を排除できますよね。

いつも彼女はボンゴレを頼み、話に夢中になりながら、手元を一切見る事も無くパスタと一緒に魚介の香りをくるくると凄まじい速さでフォークに巻き付ける。器用なものだ。

みたいな表現も、料理のイメージとともに○子の表情まで伝わってきそうですし、次に彼女が言いそうなことも豊かに湧いてきます。
別の友達は、また違う個性があると面白いし、場によって空気が変わり飽きさせない。

〇美はやはり早く来ていたようだ。どんよりした空気が辺りを取り巻くので彼女だとすぐにわかる。私は思わず「どうしたの? 大丈夫?」と心配してしまうのだが、結局はいつも愚にもつかないことで悩み、落ち込んでいるだけなのだ。「いつもの落ち込みね。元気で安心したわ」「ひど~い、何よそれ。何か奢ってよね」
「甘いものを食べると気分も明るくなるって本に書いてあったわ。ケーキでも食べよっか」

と、柑橘系の酸味が鼻をくすぐるタルトであるとか、何を食べさせれば彼女に似合うか考えるのもまた楽しい作業です。

これらの手法を使ったからと言って、エンタメに傾くわけではありません。
純文学や文芸作品などでも、料亭や旅館、あるいは蕎麦屋などで食べ物の描写が魅力的に描かれます。
これを生かさない手はありませんよ。
とりあえずお伝えいたしました^^


登場人物の個性の鋭角化、嗅覚の効用・・・なるほど、ですね。
次こそ・・・・頑張るぞ! という闘志が湧いてきたセイラでした。
池ちゃん、今回も的を射たアドバイス、ありがとうございました